-手織りを始めてから、その後-

「うちのスタッフになってみない?」

まったく予想していなかった言葉に最初は戸惑いました。
ですが、話すうちにオーナーが気持ちで声をかけてくれていることが伝わり、僕もどうせやるなら全身で織りの世界に飛び込みたい!と思い、タテ糸作りも何もわからないまま、手織工房のスタッフとしてお世話になることになりました。

その後は工房仕事と共に、時間があれば作品(といっても、本当に好き勝手織っていただけ)製作を続け、2年目の冬には個展を開いたり、手創り市に出店したりと個人活動も始めていました。
一日中、織りのことを考える日々はとっても充実していましたし、織りを通して出会う人たち、物作りを通して広がる世界がとても刺激的でした。
大好きな吉祥寺の街に住み、職場も吉祥寺、製作活動も続けられている。
なにひとつ不満の無い暮らしでした。

そうして30歳になるころ。
自分のこれまでと、これからを改めて考えていました。
僕は、これまでどう生きてきて、これからどうやって生きていくのか。
どう生きていきたいのか。
そうした時に、思いました。

もっと土に近い暮らしをしたい。

地に足をつけた日々を送りたい。

そのために僕がいる場所はどこなんだろう。

地元つくばのことが浮かんできました。

つくばの実家では母が畑をしながら、ほとんど野菜を買わない暮らしをしている。
土地がある。
家がある。
東京にもすぐ来れる。
もしやつくば、今の僕にとってとてもいい環境だったりするんじゃないの?

30歳になった僕は月に1度、つくばに帰っては地元の友人に会ったり、いつの間にか変わっていくつくばの町並みを見て回ったりするようになりました。

-つづく-